山猫を探す人Ⅱ

okenamay.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
2011年 08月 24日

久恋の早池峯剣ヶ峰

早池峯本峰から見ると、早池峯剣ヶ峰は東尾根上にある突起に過ぎない。
なぜなら、本峰より標高が100m近く低いからだ。



しかしながら、この山の真価は東側から見るときに120%発揮される。
そのことを教えていただいたのは、ブログ仲間の一如様の記事でした。



以降、アプローチが格段に良くなったことも手伝い機会を窺っていたのですが、
諸事情ありまして2年間待ち続けたわけです。



って、前置ナガ!



ええっと、ここからでしたね。



c0337257_12250656.jpg




5合目の標識から左手の斜面に踏み跡があり、それをよじ登ると、こちらに出ます。



「安倍ケ城」・・・・・・ああ、安倍ケ城!!!



遠野物語拾遺122話に語られた不思議てんこ盛りの場所。



このタイマグラの河内(かっち)に、巨岩でできた絶壁があって、そこに安倍貞任の隠れ家があったといい、これを安倍が城とも呼んでいた。下から眺めるとすぐに行けそうに見えるが、実は岩がきつくて、特別の道を知らぬ者には行くことができぬ。(以下略)



正直なところ、ワタクシは別な場所を「安倍ケ城」だと睨んでいた。
なので、この標柱を見たときは「???」だった。



しかし、根拠も無く標柱を立てるわけもなく・・・・でも、物語の記述と合致しないぞ・・・・



河内(かっち)の意味がまず引っかかる。
カントー人にとって、河内は「こうち」「かわち」と読み、川の上流域にある開けた場所を指す。東京都の小河内ダムも、アルプスの上高地も上流の思わぬに開けた平地が地名のルーツだ。しかし、東北地方ではカッチが水源の意味も持つと知った。となると沢の源頭もカッチだ。タイマグラのカッチは。。。いっぱいあるぞ・・・・下流から数えると高桧沢から始まり、小田越まで、大きい沢が6本はある。



c0337257_12250699.jpg



その中で源頭が絶壁と見える岩山なのはアンニョカイ沢しかない。なので安倍ケ城は1637.6m三角点峰だと踏んでいたのだが・・・・





確かにここもアンニョカイ沢の一本東の沢の源頭だが、はたして麓から大絶壁として見えるかどうか、はなはだ疑問だ。



これは異論反論が噴き出しそうな標柱だわい。



c0337257_12250644.jpg




あなたの岩肌に岩穴があるようにも見えるが、はたして真実は如何に・・・・
そもそも安倍ケ城伝説は誰が創作したのか・・・・



一番ありそうな説は、前九年の役で敗れ去った安倍氏の残党が落ち武者となってタイマグラの地に生き伸びた。時代が下がるにつれて、その安倍の残党が、安倍貞任そのものに変化してしまった。というものだろう。
安倍氏を敵視する政権が天下を獲った世の中では、安倍氏は隠れなければならない。
よって、山奥の岩穴が隠れ家となったのであろう。



c0337257_12250657.jpg




話があっちこっちに跳んでしまったが、山登りはいよいよクライマックスを迎えようとしている。
1637.6m三角点手前から見る早池峯剣ヶ峰は孤高の独立峰に見える。



c0337257_12250772.jpg




これだけ均整のとれた三角錐は芸術的だ。



c0337257_12250749.jpg




ワタクシが安倍ケ城と睨んでいた岩山1637.6m峰は徳兵衛山と呼ばれていた。
あるいはこの道を開拓した猟師の名前か?
ここから、道はしばらく遮るもののない稜線散歩となる。
当然植生は高山帯となる。



c0337257_12250790.jpg




ナンブトウチソウだ。
ということは、ここが蛇紋岩地帯になったことを意味する。
これは早池峯特産種だ。



c0337257_12250703.jpg




やや! また旨そうなキノコが。。。。
しかし、これ○茸に似ていませんか?



コソコソと調べ・・・・



確かにコメツガ林にマツタケは生えますが、これは姿かたちがまったく違いますね。



ああ、口にしなくてよかったwww



c0337257_12250755.jpg




などと言っているうちに、急登は終わり、三角錐のてっぺんが見えてきた。



c0337257_12250788.jpg




久恋の山は標識ひとつの簡素な頂であった。



早池峯本峰は湧きあがるガスに呑まれていたが、ここは晴れの領域だった。



好ましい、なにもかも好ましい。



大変満足してしまったので、早池峯本峰には向かわず、往路を引き返した。

行程の地図はこちら



c0337257_12250768.jpg




拙いがもう少しまともな登山記録は烏賊煮。。。いや、以下にw



早池峯東稜登山の記

登山日:2011813日(土)

天候:晴れ(雲量多め)

大規模林道川井住田線の悠久の道トンネルまで前夜のうちに入っておく。
トンネルの宮古市側に開通記念石碑と広い砂利敷きの駐車スペースがあるが、チェーンが張られていて進入不可だ。何のための駐車スペースなのか? 理解に苦しむ。仕方がないので堂々と路上駐車だ。

もっとも1日100台に満たない通行量なので交通の障害になる恐れはゼロに近い。

初見の行程なので、十分明るくなってから行動を開始するが、ブヨの多さに閉口する。

林道横に旧川井村が設置した「木の博物館 高檜山イチイの森」の看板がある。そこからしっかりとした踏み跡があり大規模林道トンネルの切り通し横を上っていける。道は林間に入ると幅広の廃林道となり、若干下り気味に北北西へ500mほど進む。進路が北北東に大きく変わる個所から車が走行可能な林道となる。林道を100mほど進むと左手に刈り払い道が現れる。小さな手作り道標があり「イチイの森」「剣ケ峰縦走コース」と書かれている。笹藪の中の立派な刈り払い道を西へ進む。時折林間に野芝の開放空間があり概して明るい森だ。高檜山の南尾根を乗り越すまで緩やかな登りとなる。この辺りから林間に巨木が見てとれるようになる。ダケカンバ、ブナ、イチイ、シナノキなどが識別できる。
高檜山の南尾根を乗り越すと緩やかに下り、高檜山と独標1451mの間の最低鞍部(1155m)に至る。

周囲にはイチイの巨木が数本あり圧巻である。道はここまで大変よく整備されているが、独標1451mの登りに入ると下草がうるさくなり、また倒木も多くなる。林内はカニコウモリの白い花が随所に咲いている。樹相は今までの広葉樹林からオオシラビソを中心とした針葉樹林に変わる。急登が1kmに渡って続くこの区間がこのコースで最も苦しいところだ。登りきった一角はオオシラビソの大木が広範囲に渡って倒れておりまるで空から何かが落ちてきて一気に森をなぎ倒したような異様な光景だ。

原因はなんだろう? UFO?  極小ブラックホール? 極めて強力なダウンバースト?

道は一部不明瞭となるが、赤布が随所にあり、道を失うことはない。広い尾根道を緩やかに登っていくと左側の尾根が切り立ってきて、同時に大きな岩が目立ち始める。岩は右側を捲いて行く。標高1500m付近に5合目の標識があり、左手の斜面に踏み跡がある。それをよじ登ると岩峯に出て視界が開ける。

傍らに三陸北部森林管理署が設置した「安倍ケ城 標高1508m」の標柱がある。
これは意外だ。今まで安倍ケ城は1637.6m三角点峰と想像していた。辺りを見回すと、大岩の一部に岩穴があるように見えなくもないが、そこへ達する術はないので確かめようがない。

周囲はハイマツ、シャクナゲ、矮小化したコメツガ?に岩が混じり、ナンブトウチソウが咲いていた。
岩の下は切り立っている。ここで大休止、朝飯タイムとする。

安倍ケ城を後にして巨岩を縫って尾根を行く。道はオオシラビソの樹林対が続くが、次第に丈が短くなり、矮小化したコメツガとシャクナゲにハイマツが混じるようになると一気に視界が開けて岩稜の登りとなる。登りきった場所に「徳兵衛山(剣ヶ峰)1637m」の標柱があった。設置は先程の安倍ケ城と同様、三陸北部森林管理署だ。徳兵衛山からはしばらくハイマツの岩尾根を行くが危険はない。高山植物も種類が多くなるが、やはり早池峯本峰には敵わない。早池峯剣ヶ峰への最後の登りは背丈を越える矮小化したオオシラビソ、コメツガ、シャクナゲの密林を切り開いた道だ。厳しい環境なので樹高はないが根張りは凄い。まるで盆栽の森を歩いているようだ。標高が上がるにつれてハイマツが混じりだし、オオシラビソ、コメツガ、シャクナゲは膝上くらいの丈になる。展望は330度だ。展望を遮るのはもう早池峯剣ヶ峰しかない。急登を終えてまもなく山頂に至る。やはり三陸北部森林管理署設置の標柱「早池峰剣ヶ峰1827m」があった。一連の標柱設置は最近の事であろう。数年前の登山記録では早池峯剣ヶ峰はどこが頂上だか判然としないと書かれていた。

西方面、早池峯本峰はガスの湧き出すポイントになっていて視界がきかず、発生したガスが風に乗ってゴンゴンこちらに飛んでくるが、東方面の視界は良好だ。湿度が高く、海までは見えなかったが、タイマグラや辿ってきた稜線、悠久の道などが見てとれる。
目的が剣ヶ峰登山だったので早池峯本峰へは向わず、往路を忠実に戻る。

コースタイム

悠久の道トンネル宮古市側(1070m)4:51-5:15林道分岐・剣ヶ峰縦走コース入口(1075m)5:15-5:47高桧山・独標1451m最低鞍部(1155m)5:47-6:34独標1451m北倒木帯(1445m)6:34-6:51五合目・安倍ケ城(1508m)7:09-7:36徳兵衛山(剣ヶ峰)(1637.6m)7:37-8:32早池峯剣ヶ峰(1827m)8:44-9:38徳兵衛山(剣ヶ峰)(1637.6m)9:41-10:09五合目・安倍ケ城(1508m)10:18-10:35独標1451m北倒木帯(1445m)10:35-11:46林道分岐・剣ヶ峰縦走コース入口(1075m)11:46-12:01悠久の道トンネル宮古市側(1070m

データ

歩行距離:約11km

登降高低差:約770m(上り下り同値)

歩行時間:7時間10分(うち休憩42分)










by Wild_Cat_Seeker | 2011-08-24 06:17 | 花、植物 | Comments(6)
Commented by たみゃちょ at 2011-08-24 19:43 x
pati,パチ、八!
おちかれさまでしたー ひとまずミンションコンプでしょうか。

謎に満ちた安倍ヶ城、「行き着けそうな場所に見えるが、
道を知っている者でないと辿り着けず・・・」という
遠野物語でも特にイメェジ掻き立てられる場所でした。
画像を見ると、絶壁とも言えそうな岩に洞穴らしきもの
・・・ありますよね。

でも、安倍ヶ城伝説には「食器が云々」って記述もあり
ましたっけ。
まだここの謎は尽きませんね。

それにしても、素晴らしいレポォトでした。

サァ、次なるミッションは・・・・カゲロウの山で
小屋掛けして「あいあい」言うヤツを探すとかw


Commented by yamaneko at 2011-08-24 22:37 x
たみゃちょ様

タイマグラ安倍ケ城伝説は、奥が深すぎて途方にくれますw

その岩屋に石の食器や調理器具があった話は、なんか別の話との複合ではないかと、考えております。

石の食器。。。。それは縄文時代の遺物なのでは???

縄文時代の遺跡がタイマグラの地にあったのは間違いないところで、たぶん石器とか土器なんかが出土していると思います。
ただ、険しい稜線にまで、縄文人が逝ったかというと、はなはだ疑問です。しかし、猟の途中の避難場所として、確保していた確率もゼロではないですね。

カゲロウの山・・・・・あいあい、どれはどこどこ?

まずはワタクシが声をかけてみましたw

Commented by とらねこ at 2011-08-25 20:47 x
山猫さんの本領発揮ですね。
レポで行った気分を味わうことができました・・・妄想ですけど・・・汗
お疲れ様でした。

Commented by yamaneko at 2011-08-25 23:13 x
とらねこ様

へい! 去年は愚行の繰り返しで山ノボラヌ猫でしたから
今年は原点回帰で、登りましたw

やはりハヤチネはイイです。
最高です!

Commented by chomo at 2013-09-24 19:03 x
「その中で源頭が絶壁と見える岩山なのはアンニョカイ沢しかない。なので安倍ケ城は1637.6m三角点峰だと踏んでいたのだが・・・・」← 私も全く同感です。例えば、同じ峰(1637.6m三角点峰)を遠野側と川井側で違う呼び方をする「徳兵衛山=安倍ケ城」なら納得です。

Commented by yamaneko at 2013-09-25 00:38 x
chomo様

古い記事へコメ入れありがとうございます。
文献などを漁ったわけではないので、すべて主観と推測で書いた記事でしたが、あの辺鄙で目立たない場所にわざわざ「安倍ケ城」の標柱を建てたのですから、何かしらの確信があってのことだと思います。
ネットを探っても確信的事実は出てきませんけど、そのうち安倍ケ城から見える岩を片っ端から調べる人が現れて、岩穴を発見するような気がします。



<< 早池峯東尾根の癒し      早池峯東尾根を往く >>